samedi 28 juin 2014

夏有涼風 ~お稽古メンバーブログ3~

私達家族は、子供ができたことを機に数年前、今住むSaint Arnoult en Yvelinesという森に囲まれた村に引っ越してきた。
アメリカ風の、家と家の間に壁がない、静かな住宅街。気になるご近所さんはというと、ほとんどが両親くらいの年代の
定年後のカップルがほとんど。田舎の人は、パリとは違って、皆やさしそう。。。と思って喜んでいたのは束の間、一軒だけ
どうも気になる、感じの悪いおじさんがいた。男の子2人を持つ4人家族なのだが、特に親父さんは、妙に愛想がよくない。
こちらが挨拶をしようと目線を送っているのに、絶対わざと、無視しているのだ。私と旦那の中では、”あの人、完全に
人種差別の人やと思うよ””うんうん、絶対そう!”とすっかり彼は悪者になっていた。

そんなある日、私が庭の芝生刈りの作業を、手動の道具を使って汗を流してやっていたとき、あの親父が前を通りかかった。
いつもの通り、がん無視をくらわされるのを承知で、何気に見つめていたら、今日は彼もこっちを見つめている。
???と思った瞬間、こちらに向かって、ずんずん歩き出した。何?何?何か私悪いこと、したかな??と焦り始めた頃、
”そんな道具でやっていたら、すぐに背中を悪くするよ。”と言う。”うちに電動のものがあるから、それを使うといいよ”
そう言うと、彼はこっちが答える前に、さっさとその道具を探しに彼のガレージに向かった。
”はい!僕は急いでないから、返してくれるのは、いつでもいいよ”とニコリ。
ぽかんとあいた口がふさがらなかった。
今まで、人種差別呼ばわりしていた、あの愛想の悪い男が、今かけてくれた優しい言葉と行動のギャップに、とまどいを隠せなかった。
そしてその夜、いかに人のことを見かけで判断することがいけないことか、旦那とワインを飲みながら、しみじみ語り合った。

その数日後、また彼が私に話しかけて来た。無視されていると思い込んでいた時は、あんなに恐い形相だと思っていたのに、実際に話して
みると、すごく優しい目をしていることに気付いた。聞いてみると、彼の親しい友達で、日本人女性と結婚しているやつがいる。
よく家に呼んでごはんをしているから、次回彼らが来るときは、是非来ないかということだった。それも、彼の奥さんは、なんやら
お茶をやっているとか、教えているとか、、、ふーん。とにかくそれより、近所中で一番意地悪だと思っていたおじさんが、
私達を一番最初に家に招待してくれる人になるなんて、夢にも思わなかった。

そしてとうとう、彼達のお家で、裕子さんに会った。すごくキレイな人!っていうのが、最初の印象だった。
話してみると、それも、関西弁!めちゃくちゃ嬉しかった。こんな田舎で、関西弁で話せる人と出逢えるなんて、びっくりした。
同郷同士で、とにかく初対面とは思えないほど、盛り上がった。フランス人達のことは眼中になく、お茶の話、仕事の話、子供の話、
色んな話をがんがん、語り合った。そして少し話した後、すぐに感じた。この人は、絶対すごいお茶の先生だと。
関西弁でくだけているのだけれど、どこか凛とした美しさがある。ふんわり女性らしい雰囲気の中に、芯がしっかり通っている。
こういう人が伝えるお茶は、きっと素晴らしいのだろうな。。。以前にパリで習ったきり、尻切れトンボ状態になっていた、私の中のお茶心
に、また炎がともった。お茶のほうから、またやるべきだよ、と言ってくれている気がした。

今の時代は本当に便利になったもので、裕子さんとは、LINEでその後も、簡単にかつ頻繁に、連絡をとりあうことができた。
裕子さんも、週末はご家族と時間を過ごしたいだろうに、平日はどうしても無理という話で、あきらめかけていた私に、
土曜日にできるかもしれない、と前向きに土曜日講座開講にすぐに取り組んでくださった。この場を借りて、改めて感謝します。

こうした不思議な縁で、私はまた、お茶を始めることになりました。
海外に暮らしている分、こうして定期的に日本を感じること、そして季節を感じること、そして今日の幸せを感じること。
今後、自分がお茶のお稽古を通して、どういう風に自分が成長してゆけるか、今から楽しみです。

坂口香織




1 commentaire:

Yu an Paris a dit…

やっぱり人は目を見ると分かると思います。 特に30歳を超えるとこれは誤魔化すことができない。
だからこそ、毎回の稽古で『ことば』を唱えるのかな。。 
自分に正直に生きるように、もしくはこの”親父”の様に、人に思いやりを持つように。 毎回の稽古で『ことば』の意味をよく考えて、思いやりを持つ人間へのトレーニングになれば、と思っています♪ 裕子