samedi 6 septembre 2014

お稽古メンバーブログ ⑦

私は地元に、一風変った友人たちがいる。

伝統工芸を受け継いだ人、完全無農薬で自給自足の生活をする人、日本の食文化をテーマに作品を作る芸術家、古い民家の古材を再利用する会社を起こした人、南米を自転車で旅した人、日本ではあまりなじみが無いヤギチーズを手作りする酪農家さんなど…
京都で仕事をしていたら出会いそうも無い彼ら。そんな彼らと私を引き合わせてくれたのは、これまた一風変わった中学校の英語教師Mさんだった。
 
Mさんとは、私が中学の頃から社会人になってからも通っていた剣道道場で知り合った。
田舎なので周りの先生方や通ってくる人たちはみんな昔からの顔見知り。新しい人が一人でポンと参加できる雰囲気ではなかっただけに、高段者の先生を前にしても萎縮せず、スーッと入ってきてあっさり溶け込んでいく彼女の親しみやすさに驚き、ハラハラした。
 
そんな彼女は30歳を過ぎてオートバイに乗り、ウクレレをお供に世界一周の旅を単独で成しえた人で、雑誌や新聞に載るほどの人。街中を白馬に乗って現れる、ちょっと知られた人だった。

彼女の旅の話は面白い。
砂漠でテントを張って野宿したときの話で、「野生動物とかサソリとか怖く無かったですか?」と聞くと、「野生動物より人間が入ってくるほうが怖いよ。」とか、「一人何も無い砂漠を疾走していたら寂しくなってきて、その辺のハトと仲良しになった。」といってハトの物まねをしてくれた時はお腹を抱えて笑った。
 
その彼女に連れられて行ったのが、地元で農業や酪農、伝統工芸を受け継ぐ人たちが集まって近況を報告したり、これからやりたいことを発表したりする、「満月の会」。
月に1度、満月の夜にみんなでご飯とお酒を持ち寄って、時にはバーベキュー、時には手作りカヌーで湖に出てお月様を観賞したり、ギターやウクレレを聴きながら夜遅くまで話したりした。
 
その会で私は今後やりたいこととして「海外で剣道をやりたい」と言ったのを覚えている。
中学からずっと体育会でやり続けてきて、無心とは何かをずっと心がけてきた。けれど、毎回の稽古を充実させたい私と、「結果を出す」という周りと目標が合わず、この頃にはもう無心で稽古を出来なくなっていた。
多くの知り合いは「海外なんて今更行ってどうするの?変わったことせんと結婚すれば?」と言う。けれど満月の会の皆は「面白そうじゃないの!がんばって」と背中を押してくれた。
 
満月の会から離れて3年。彼らとは今でもSNSで繋がっていて、見ているとこの会で話していたことを実現した方や、地元に貢献し続けている方ばかり。
彼らの共通点は「自分の好きなことを好きなように」だ。彼らの肩肘張らない活躍は私に元気をくれる。
 
さて、Mさんは今でも地元で2頭の馬と遊牧生活を送っている。

住んでいるのはモンゴルのゲル風のテントで、毎日火を起こし、山で仕留めた鹿を自分で捌いたりも出来るし、買い物に行くときは馬に乗っていく。
自分の好きなことを突き詰めた彼女が、最近の新聞のインタビューで「自分の好きな世界は自分で作って良い」と答えていて、彼女の笑顔が思い浮かぶ。Mさんらしいなぁと思った。自分の幸せとは何か、彼女はよく知っている。
 
私のほうは、実際フランスに来てから剣道をやっていたが、日本以上に無心になるのは難しく、また病気も重なって今は稽古をしていない状態だ。
でも、捨てる神あれば拾う神あり。
茶道に出会い、書道に関わらせてもらい、一つの事に徹しで無心になる瞬間を、わずかながら体験させてもらっている。もし日本に残っていたとして、病気を抱えたまま、前向きに過ごしている自分がいただろうか。

もし今彼女に「聡ちゃん、幸せ?」と言われたら「うん、幸せよ」と答える自分しか想像できない。
 
聡子

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